怪奇壱 祟られ屋

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 祟りなんて古臭い迷信、今時誰が信じる。科学の発展を妬む狂信者なんて、時が流れていく内に淘汰されるんだ。その芽を今から摘んで、何が悪い?  鉄パイプを捨てれば水が跳ね、水面に波紋を描いた。空蝉の鳴き声が、自分に対する称賛の拍手のように聞こえた。  ある種のエクスタシーを感じ、震えを堪えるように自らの肩を抱く。こんな喩えようのない感覚は初めてだった。  周囲に人の気配はなく、死体を隠す時間は幾らでもありそうだ。返り血を拭く時間すらも。  そう思った矢先だった。 「何してるのかな?」  驚く、なんてものじゃない。意識が遠退くほどの激しい鼓動で、危うく言葉で殺される所だった。胸が焼けるように熱い。  振り返ると、声の主は畦道に立ってこちらを見下ろし、高慢そうな笑みを向けていた。  いつからあそこに居たのだろうか。声を掛けられるまで人の気配は感じなかったのに。  しかし、そんなことはこの際どうでもいい。現場を見られたのは事実なのだから、どうにかしなければ──。 「これは違う、違うんだ」 「どう違うの?」  間髪入れずに聞かれ、言葉を濁すことすら出来ずに黙る。  きっと、言い逃れられない。それならいっそのこと……。  こいつも殺してしまおう。  
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