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祟りなんて古臭い迷信、今時誰が信じる。科学の発展を妬む狂信者なんて、時が流れていく内に淘汰されるんだ。その芽を今から摘んで、何が悪い?
鉄パイプを捨てれば水が跳ね、水面に波紋を描いた。空蝉の鳴き声が、自分に対する称賛の拍手のように聞こえた。
ある種のエクスタシーを感じ、震えを堪えるように自らの肩を抱く。こんな喩えようのない感覚は初めてだった。
周囲に人の気配はなく、死体を隠す時間は幾らでもありそうだ。返り血を拭く時間すらも。
そう思った矢先だった。
「何してるのかな?」
驚く、なんてものじゃない。意識が遠退くほどの激しい鼓動で、危うく言葉で殺される所だった。胸が焼けるように熱い。
振り返ると、声の主は畦道に立ってこちらを見下ろし、高慢そうな笑みを向けていた。
いつからあそこに居たのだろうか。声を掛けられるまで人の気配は感じなかったのに。
しかし、そんなことはこの際どうでもいい。現場を見られたのは事実なのだから、どうにかしなければ──。
「これは違う、違うんだ」
「どう違うの?」
間髪入れずに聞かれ、言葉を濁すことすら出来ずに黙る。
きっと、言い逃れられない。それならいっそのこと……。
こいつも殺してしまおう。
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