第一章 慟哭

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髪も乾かさずに家を出た。 息も絶え絶えに廊下を走っていた。 こんなことなら、普段から妻のいうとおり運動しておけばよかった。 廊下の先に泣き崩れる義理の母がいた。 ポツンと光るその先に安置所という文字が確認できた。 妻は… 彩は父親を早くに亡くし、義母に女手ひとつで育てられてきた。 そんな義母の背中を見て育った彩は家事もこなしながら、仕事を続けていた。 僕の目からみても頑張りやさんな妻だった。 義母は僕を見ると、立ち上がり安置所へ促した。 中は薄暗く、ひんやりとした、それでいて肩にのし掛かるような重たい空気につつまれていた。 黒に染まる部屋に浮かぶ白いベッド。 僕は一歩ずつゆっくりと近づいていった。 顔にかけられた布にゆっくりと手をかけた。
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