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永倉は総司の隣にしゃがみ込み、うずくまる美華に静かに言った。泣いている子供をあやすような優しい口調だった。
『あたしに価値なんてあるわけないよ…どいつもこいつも…あたしの体しか求めてない。時間が来たら、みんなそれぞれ自分の帰る場所に…待っててくれる人の場所に帰るじゃん!…あたしには帰る場所も無ければ待っててくれる人もいない……一生体を売って、誰もいない家に帰って…こんな汚い体のあたしのどこに価値があるって言うの!?誰が必要とするの!?…噂ばっかり大きくなって、街を歩けば好奇の目で見られて…もう嫌なの!!』
―パァンッ
突然、胸倉を掴まれ頬を叩かれた美華は、その衝撃で布団に倒れ込んだ。
「ひ…土方さん!何を…」
総司は慌てて美華を抱き起こした。
「噂がでかくなって何が悪い…他人から好奇の目で見られて何がいけねぇんだ?遊女になってでも生きる道を選んだのはお前自身だろ?親がいなくたって強く生きてる奴はいる。外見で虐められたって自分に自信を持ってる奴はいる。ダチが死んだらそいつの分まで生きてやろうとする奴はいる。遊女だからって後ろ指さされても胸はって生きてる奴はいる。…美華、甘ったれんな。他人や環境のせいにしてばかりじゃいけねぇんだよ。周りを変えたきゃお前が変われ。お前が心を開かなきゃ周りはお前のことなんかわからねぇんだよ。お前だって本当は変わりたいんだろ?」
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