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羽織りの袖で涙を拭った近藤は美華を見て言った。 「あぁ…そうだぞ美華。笑えるうちはまだ死んじゃいけない。お前はまだ生きたいと思っているんだ。…どうだ、美華。ここで私達と生活してみないか?もちろん、疑っているからじゃないぞ。私は美華が違う時代から来たという話しを信じる。ここで、本当の自分を取り戻してみないか?怖がらないで一歩踏み出してみるんだ。まだ知らない世界を私達と共に見てみようじゃないか!なぁ?歳」 土方の肩に手を置き、近藤は涙ぐんで言った。 小さくため息をついた土方は、腕を組んだまま立ち上がり襖の前で立ち止まった。 「総司、近藤さんから金を貰ってそいつが着る着物と草履を買ってこい。永倉、お前は道場で隊士に稽古をつけてやれ。近藤さんは総司が戻って来るまで、そいつの話し相手になってやってくれ。…俺は出掛けてくる」 そう言って土方は部屋を出て行った。 「わーい!近藤さんっ、お金くださーい!!」 「とっ…歳!私の懐事情を知ってるだろ!?」 「稽古ぉ!?俺今日は非番なのに~」 しぶしぶと永倉は部屋を出て行き、近藤は名残惜しそうに総司に金を渡した。
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