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大きな包みを抱えた総司は屯所に向かって歩いていた。
(美華さん、気に入ってくれると良いんですが…あっ!)
はにかみながら歩いていた総司は、小間物屋を見付けると店先を覗きこんだ。
簪(かんざし)や櫛(くし)、髪紐などがところ狭しと飾られている。
(近藤さんに貰ったお金がまだ少し余ってるし…)
財布を覗いた総司は店の中へ入って行った。
「毎度ありっ!」
暖簾(のれん)をくぐった総司は綺麗な紙に包まれた小さな箱を大切そうに懐(ふところ)に仕舞いこむと、再び歩きはじめた。
「あれ?土方さーん!」
総司は屯所近くの小川で土方を見付けると、小走りで近付いて行った。
突然呼ばれた土方は、それが総司だとわかると慌てて紙と筆を隠した。
「土方さん、今何を隠したんですか?」
「…なっ、何でもねぇよ!それより総司、お前随分と大荷物だな?」
「着物が一着じゃ可哀相かと思いまして…二着買ってきました!もぅ、財布すっからかんですよ~あはは!」
「そ、そうか…」
恨めしそうな顔をした近藤を想像した土方は、総司に気付かれないようにため息をこぼした。
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