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「さて、美華さんには何をしてもらおうかな…」 台所を見渡して、井上は考え込んだ。 『あの、井上さん!先に言っちゃうけど、あたしこの時代の人間じゃないの。だから井戸から水を汲んだことも無いし、竈なんて初めて見たし、この着物だって沖田さんが着せてくれたし…だから本当に何もできないの』 美華は自分から井上に説明した。 井上は最初驚いた様子だったが、美華の話を聞き終わる頃には再び笑顔が戻っていた。 「君には目も耳も口もある。言葉だって通じる。わからないことは聞けば良いんだよ、最初から何でも完璧にこなす必要はないからね。じゃあまずは、井戸の使い方から覚えようか」 井上は美華の頭を大きな掌で撫でながら言った。 『ありがとう…井上さん』 「みんな源さんって呼ぶから、美華さんもそう呼んでくれて構わないよ」 美華の頭から手を離した井上は言った。 『ううん…井上さんって呼ばせて。癖なんだよね、男の人をさん付けで呼ぶのが』 (この娘は一体何を見てきたのだろう?こんなにも悲しい瞳で笑うなんて…) 「はは、井上さんなんて呼ばれると恥ずかしいな。じゃあ井戸の方に行こうか」 美華の心の闇に気付いた井上は、そのことを悟られないように明るく言うと美華を連れて台所を後にした。
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