文化祭

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ただ逃げてしまいたくて、たくさんの人が行き交う廊下を無心で走り抜けた。 誰かが私を呼ぶ声が聞こえた気がするが、聞こえないフリをして、ただ走り抜けた。 耳元に張り付く声を、不気味に笑うあの人を、早く忘れてしまいたくて。 ------------------ 「ひゃっほー!」 「はしゃぎすぎんなよ、鷹丸(タカマル)」 「お前が冷静すぎなだけ!」 気怠そうにため息をついた眼鏡の青年を背に、鷹丸と呼ばれた青年はまるで鳥のように両手を広げて走り出した。 黒髪の間に赤いメッシュが入っている鷹丸は、まるで子供のような笑顔を張り付け校庭にある露店を次々に回っていった。 そんな彼の後に続く眼鏡の青年は、真っ黒な髪にすらりと背が高く、まるで優等生のよう。 手の掛かる弟と、それに仕方なくつきあっている兄、と言う表現があっているだろう。 「蒼(ソウ)!たこ焼き!たこ焼きあるぞ!」 「・・・はいはい」 二人が周りと違うのは、その背に大きなギターケースを背負っていることだろうか。 二人の容姿が周りと比べるとかなり飛び抜けていることもそうだが、その大きなケースを背負っているだけでも、周りは二人を意識した。 「・・・ん?」 「どうした、鷹」 どうして目に止まったかはわからない。 どうして気になったかはわからない。 ただ、泣いていたから。 たこ焼きを一つ受け取り、俺はその子を追いかけた。 「鷹!?おいっ!」 .
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