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流れる涙を必死に拭いながら、私は玄関から飛び出した。
無数の露店の間を駆け抜け、先ほどの裏口の方へと向かう。
ただ人気がないところに行きたかった。
誰もいない場所に行きたかった。
人の間を無心に駆け抜け、ようやく先ほどの裏口へとたどり着いた。
その近くにある大きな一本杉に、私は背中を預けた。
上下する肩を落ち着かせるために、自身の心を落ち着かせるために。
『・・・忘れなきゃ』
「何を?」
『!!??』
不意に聞こえた声の方を振り向けば、見慣れない人が私の顔をのぞき込んでいた。
『いっ嫌っ!!』
勢いよく後ろへ退くが、思わず足がもつれてしまい、私の視線は勢いよく反転した。
『っ痛・・・』
「水玉か、健康的だねー」
『っ!!』
いきなり何を言い出すというのか。
見えてしまったであろうそれを急いで隠し、赤く染まる頬を隠すように深く俯いた。
にこにことした微笑みを浮かべる子供のような男の人は、どうやらここの生徒ではないらしい。
赤いフード付きのパーカー、に黒いインナー、ボロボロに破けたジーパン。
それに黒と赤の髪の毛。
・・・不良だ。
「あんたさ、泣いてただろ?」
『・・・っ?』
「一体何が・・・」
『やだっ!!!!』
伸びてきた腕を避けるように、座ったままずりずりと後ろへ下がった。
「な、何だよ」
『・・・怖い、』
「・・・、?」
『男の人が、怖い・・・』
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