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「・・・怖い?」
俺が?と自分を指さした彼は、逃げようとする私にどんどんと詰め寄ってくる。
そのにこにことした笑みは一体どこからくるというのか。
「じゃぁさ、俺のこと女だと思ってよ」
・・・は?
何言って・・・?
「俺、どうにもお前が気になるみたいでさ」
『・・・な?』
「少しでも仲良くなりたいみたいなんだ」
どうしてだろう。
そのとき一瞬だけ、彼が別の人に見えた。
ふわりと笑いかけた笑顔は同じはずなのに、漂う雰囲気は少しだけ、悲しかった。
「いいだろ、?メイドさん」
『・・・メイ、ド?』
次の瞬間、思い出したように自分の格好を見た私は、声にならない声を上げた。
今更どこに隠れようと遅いのだが、こんな格好で外に出たことが恥ずかしくて、一本杉に慌てて隠れた。
「あははっ!」
よっぽど慌ててたんだな、なんてお腹を抱えて笑う彼は、もう先ほどの悲しい雰囲気を漂わせてはいなかった。
一体何だったのか。
・・・気のせい、なのかな。
「俺は鷹丸(タカマル)、お前は?」
『神崎、まこ』
始まりはここからだった。
彼にあったこの瞬間から、私の時間は少しずつ動き始める。
そして、彼の時間も。
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