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「鷹!!」
至近距離まで近づいていた彼の顔がいきなり遠ざかった。
ぐえっ!なんて苦しそうな声を出して、猫のようにひょいっとつまみ上げられた彼は、自分より幾分か大きい存在を見上げた。
「離せよ、蒼!」
「勝手に歩きまわんな、バカ」
その様子を少し離れたところで見ている私。
彼らはなんだか兄弟のようだった。
羨ましい、そう思った自分がいた。
「お前何してた・・・」
「まこ!可愛いだろ?」
「・・・まこ」
「メイド!」
『わー!!!』
ようやく解放された鷹丸は、にやにやと頬をつり上げながら、私を指さした。
とりあえず何でこの格好のまま出てきてしまったんだ、自分のばかっばか!なんて自己嫌悪は後にして、逃げてしまいたかった。
一本杉から顔だけ覗かせているこの状況から逃れたくて、いっそのこと足下に穴でも掘ろうか、なんて思ったりしたが逃げた方が確実に早いと確信した。
『ひぇっ!!』
なんて悩んでいる暇があれば、早く逃げていればよかった、なんて後悔は遅すぎた。
がっしりといつの間にやら捕まれている右手。
恐る恐るその手の主の方へと目線を向ければ、やはりそこにはにこにこと微笑む鷹丸の姿があった。
振り払うにも振り払えない力でがっしりと固定されている。
そんな彼の行動を見て、やっぱり男の人だと再認識させられた。
「逃がさない」
その氷のような声は、確かに彼のものだった。
にこやかに笑っているはずの彼の声は、信じられないぐらい冷たくて
熱かった。
『なっ何で・・・!』
意味が分からない。
彼がこうして私をつなぎ止めようとする意味が。
私と彼は今さっきあったばかりで、知り合いでも何でもないのに。
「おいでよ」
彼はいっそう強く、この手を握りしめてきた。
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