文化祭

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「まだやってないのかぁ」 結局引きずられるようにして連れてこられた先は、私たちがいつも体育で使っている体育館だった。 無造作に開け放たれた入り口から三人で顔を覗かせるが、そこには人らしい人は確認できなかった。 「にしても、広いな」 すらりと背の高い蒼っていう人が、するりと私の横をすり抜け、体育館に足を踏み入れた。 私たちの高校は結構な大人数のため、体育館もそれなりに広い。 まぁ、広いこと事態は嬉しいんだけど、体育の時に走るの凄くつらい。 半分ぐらいでいいんだけどなぁ、大きさ。 「おじゃまさまー」 『っわ!』 未だにつながれている右手のおかげで、彼が動くたびに私も動かなければならなかった。 いい加減もう離してほしいものだ。 なんて心の中で思うが、振り払うには彼の力は強すぎた。 「準備はしてあるみたいだな」 「ははっ、本当だ」 ずかずかと体育館に入り込んだ二人は、ステージにおいてあるマイクとか、何かおっきい箱みたいなのを見て口元をつり上げた。 彼らはきっと、ここで演奏するつもりなんだ。 「まこ」 『っ!?』 少し遠くのステージを見つめていたからか、鷹丸がいきなり顔を近づけてきたことに気がつかなかった。 瞳の中に広がる彼の整った顔つき。 こんな風に男の人に近づいたことなんかなくて、すぐにでも体が逃げようとしたけど、がっしりと両手首を捕まれて背を向けることすら出来なかった。 ニヤリとつり上げられた口元。 まっすぐな瞳。 無邪気な笑顔。 「歌は、好き?」 そんな問いかけの意味を、私はまだ、知らないでいた。 ・
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