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桜ヶ丘高校の文化祭は、毎年10月の半ばに行われる。
それは、盛大で豪華だと他校の生徒達からは大評判だった。
無数の装飾で彩られた門をくぐると、そこにはたくさんの露店があり生徒達が忙しく走り回っているのだ。
風に乗って焼きそばやたこ焼きのおいしそうな匂いが、鼻をつついた。
「神崎ぃー!!」
『?』
さくさくと露店が開かれている校庭を歩いていると、後ろから聞き覚えのある声が私の名前を呼んだ。
その声が途切れ途切れになっていることから、彼が長い間走っていたことを勝手に想像した。
「探したぞ、神崎・・・っ」
『・・・どしたの?』
前屈みになって額の汗を拭う彼の姿は、いつも必死になって部活に取り組む時の姿と同じだった。
彼の名前は坂川幸太(サカガワ コウタ) 。
一年生でありながら彼はサッカー部のエースなのだ。
そしてクラスの委員長でもある。
元気がよくて、活発で、こういう人をムードメーカーって言うのかな?
「お前がいないと盛り上がらないってよ」
『・・・何が』
「メイド喫茶」
考えた奴を本当に殴り飛ばしたかった。
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