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先日まで慌ただしく続いていた文化祭の準備は、このメイド喫茶を作り上げるためだった。
1年2組の教室をまるまる改造して、そこはピンク色を基調とした私には似つかわしくない場所が出来上がる。
・・・何なの。
深いため息も風に流れてふわふわと消えていった。
『私は・・・いい』
「そんなこと言うなよ。やってみれば楽しいから」
男子は受付やら食べ物の準備をしているらしい。
・・・そんな坂川に私の気持ちなんて分かるはずがない。
あんなひらひらでふりふりのメイド服なんて、絶対にきたくない。
絶対にっ!
「神崎のメイド服姿、みたい奴がいっぱいいるんだよ」
『・・・な!?』
「ほら、神崎可愛いじゃん?」
『かっ可愛くないっ!』
いきなり何を言い出すというのか。
真っ赤に紅潮する頬を栗色のセーターの袖で隠しながら、私は露店の間を走り抜けた。
無数に並ぶ露店の間を走り、文化祭を見に来ている一般客を追い越し、作業をしている生徒を流し見ながら。
自分は男の人にはひどく免疫がない。
話すのだって少し怖いし、触られるのはかなり怖くて仕方がない。
それに、いきなりあんなこと言われてしまっては、恥ずかしくてたまらない。
こんな私が、あんな出し物できる訳ない。
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