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母と父と娘の三人暮らし。
それが、いつの間にか二人だけになってしまった。
凶器は刃渡り20センチほどの包丁。
いつもお母さんが料理に使っていたその包丁が、そのときは凶器となってしまったんだ。
幸せだよな?
ゆがんだ愛に決して幸せなどありはしないのに。
父という名を持ったあの人は、それを愛と疑わなかった。
いつからだろう、あの人がひどく変わってしまったのは。
いつからだろう、あの人が私たちに手を上げるようになったのは。
変わり果てた現状を捨ててしまいたくて、お母さんは一枚の紙を取り出した。
物陰で見ていた私は、あの人がとった次の行動に、ぴくりとも動くことが出来なかった。
突き立てられた包丁。
うずくまるお母さん。
したたり落ちる真っ赤な液体。
「幸せなんだろ?」
狂った愛情は何も生み出さない。
ゆがんだ愛にまみれたその笑顔は、もはや恐怖でしかなかった。
ひたひたと忍び寄るあの人に、私は一体何をしたのか。
吹き飛んだ窓ガラス、吹き飛んだあの人。
現状を打破した自分自身の力は、いったい何だったのだろうか。
「・・・化け、物」
あの人が口にしたのは、そんな言葉だったんだ。
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