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そんな、感激などに縁のない弟をそのままに前を見やると、運転席のすぐ左前方についたバックミラーにお父さんの顔が写る。
お父さんも私を見ていたらしく、丁度鏡の中で視線が合った。
そっと微笑みながら、目を前の信号に視線を戻すと、豊を起こさないように小声で言った。
「ずいぶんと気に入ったみたいだな、未帆」
「かなり、ね」
正直言うと、東京から長野に引越しすると言った時はお父さんを恨みもした。
高校の友達もみんな残して、家族だけで見た事もない土地へ行くなんて信じられなかったし、信じたくもなかった。
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