「雪国へやって来て」

4/15
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/126ページ
そんな、感激などに縁のない弟をそのままに前を見やると、運転席のすぐ左前方についたバックミラーにお父さんの顔が写る。 お父さんも私を見ていたらしく、丁度鏡の中で視線が合った。 そっと微笑みながら、目を前の信号に視線を戻すと、豊を起こさないように小声で言った。 「ずいぶんと気に入ったみたいだな、未帆」 「かなり、ね」 正直言うと、東京から長野に引越しすると言った時はお父さんを恨みもした。 高校の友達もみんな残して、家族だけで見た事もない土地へ行くなんて信じられなかったし、信じたくもなかった。
/126ページ

最初のコメントを投稿しよう!