「栞」

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廊下で話しているとさすがに響くので、私達は本館を出て、雪の庭を通る屋根付きの通路を歩いて、つまらない話に盛り上がっていた。 どんな音楽聞くとか、変な友達がいるとか、テストがやたらと難しいとか。 いつか本当に東京にいる頃のように、楽に喋っている自分がいた。 「この学校で一番変なのはここかな」 と言って栞が軽く庭の向こうを指差す。 通路がすぐ先で左右に分かれていて、左に曲がって行く通路は大きな教会へと続いていた。 「校内に教会があるの?」 「一応、キリスト教系の学校だからね。 毎週土曜日の3時間目は宗教の時間があって、何クラスかがまとまって、あの教会で牧師の講義を受けるの。 キリストはどんな人だとか聖書の歴史とか。興味がなかったら間違いなく寝れる授業ね」 「栞も寝てるの?」 「私は数学やってる」 と言って、ぱたぱたとその手を振る。 なんだか、校長先生に紹介された時の言葉からは、すごく真面目な優等生っぽい人かと思ったけれど、実際の彼女の話を聞いていたら全然そういうのとはかけ離れていて、妙に安心してしまった。
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