「真一君」

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授業が始まると、担任の先生の授業だったので、みんなの前で短い自己紹介をさせられたけど、ほとんどが知っている人だったので困る事もなかったし、目線が合った美紀なんかは、自己紹介中なのに小さく手を振ってきたりした。 授業はさすがに、この辺りでもトップクラスの私立高校なので難しい内容だったけれど、全く意味不明と言うほどではなかった。 なんだか、こんなに上手くいって良いんだろうかと変な不安を抱くくらいに今日は素敵な初日になった。 授業が全て終わると、この学校は終礼はなく、みんな好き勝手に帰っていく。 美紀や奈緒も教室の出口から、ずいぶんと離れた私に大きく手を振ってから帰って行った。 私が少ない教科書を鞄に入れていると、栞が前の空いた席に腰掛けて言った。 「ね、今日敦司に会っていかない? どうせいる場所は分かってるし」 私もそれには賛成だった。 昨日のお礼も言いたかったし、いろいろと話したい事もあったから。 私達は全学年のクラスの入った本館を出ると、渡り廊下を通って音楽室や職員室のある別館の方へと向かった。 こっちに来るという事は敦司君は何かの文科系のクラブに入っているのだろうか。
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