「十字架」

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その日はずいぶんと寒い朝だった。 まだ11月なのに東京の真冬と同じくらい寒く感じた。 いつものように家族が寝静まっているような時間に家を出て、冷気を漂わせる道を歩いていく。 少し早めに来たバスに乗りこむと、暖かい空気が私を包んでくれた。 授業は一時間目は英語。二時間目は古典。 そこまでは別にいつも通りだったけれど、今日は土曜日なので、三時間目で授業は終わる。 そして、その一週間の最後の授業は東京の公立高校にはなかった、宗教の時間だった。 転入初日に通った、雪の庭の真ん中を突っ切る屋根付き通路を歩いて行く。 隣の栞も数学の問題集を片手に、この学校の宗教を説明してくれる。 もちろん、彼女は宗教には全く興味がないせいか、熱心な宗教家の人が聞いたら怒るような説明ではあったけれど。 二人で教会の聖堂の扉を開けると、中にはもうすでに多くの人達が座っていた。
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