「十字架」

3/8
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/126ページ
そこは本当に結婚式などのできそうな教会だった。 正面には巨大な祭壇と十字架、ステンドグラスの絵画、その隅には黒ずんだオルガン。 そして長椅子が中央の通路にそって両側に並んでいる。 割と聖堂自体は広いので、宗教の時間は2クラスが一緒に授業を受ける。 そのせいか、知らない人も多く長椅子に座っていた。 「席は好きな所に座っていいから、この授業は。でも後ろの方はもう空いてないね。前、行こっか」 栞は入り口近くに立つ多くの人の合間を縫って、中央の通路を真っすぐに歩いていく。 私も遅れないようについていくと、ふいに彼女が足を止めて、長椅子に座っている一人に軽く声をかける。 近くに行って見てみると、その人は真一君だった。 昨日、結局最後は会えなかったけれど、ちゃんと学校に来ていたので妙にほっとした。
/126ページ

最初のコメントを投稿しよう!