「土曜日の午後」

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駅を出ると、まず目の前に小さなバス停があり、その向こうには坂道が続いて、住宅街へと上っていく。 左右は一本のわりとおおきな道路が通っていて、その道沿いにはスーパーは本屋などが並んでいた。 少なくとも、駅の雰囲気から想像するほどの小さな街ではなかった。 なのにどうしてあの駅は人が少ないんだろう。 「こっちだよ。あの本屋の向こう側くらいに家があるから」 と言って敦司君はバス停を迂回して大通り沿いに左へと曲がる。 近くに見えた本屋は意外と遠かったけれど、そこまで歩くのに10分もかからなかった。 ただ、歩道にも雪があるせいでどうしても多めに歩いたような気がしてしまう。 敦司君と栞が立ち止まったのはとある喫茶店の前だった。 明るい感じで、窓から見える店の中には植木がいくつか飾られていて、喫茶店というよりは木造のアクセサリショップというような、綺麗な雰囲気の漂うお店だった。 どうして敦司君の家が近いのに喫茶店に入るのだろうかと不思議に思うと、栞がお店の中を見やりながら。
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