「土曜日の午後」

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「ここが敦司の家。敦司のお母さんって喫茶店経営してるのよ」 と言った。 敦司君は本当に自分の家の玄関の戸を開けるみたいに、喫茶店のドアを開けた。 「入りなよ」 と、彼がドアを半分開けたまま手招きする。 私はちょっと予想外の事だったのでテキパキと動けず、栞に背中を押されて中に入った。 中はお客さんはこの時間だからほとんどいなかったけど、耳にうるさくない程度に、かつ黙っていてもその空気を埋めてくれる程度の良い音量でクラシックがかかっていて、なかなか見つけられないような穴場の喫茶店と言ってよかった。 明るい木のカウンターの向こうには大人しそうな感じの女性が一人、コーヒーカップを棚に並べていた。 「替わるよ、休みなよ」 と言って敦司君はカウンターの向こうの女性に彼の鞄を預ける。 女性は「ありがとうね」と言いながら私達にも軽く挨拶する。 彼女が敦史君のお母さんなのだろう。ずいぶんと若いので少しとまどってしまいながらも、何とか挨拶を返した。 敦史君のお母さんは彼の鞄を持つと、後ろのドアを開けてそこから奥へと入っていった。
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