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「好きなとこ座れよ」
彼はエプロンを着けると背中に両手を回して紐を括りながら、カップのある棚の方へと移動した。
カウンターの席に栞と隣り合わせで座ると、彼はまずホットのレモンティーをカップに注いで栞の前に出す。
もう彼女は常連と化していて、注文しなくてもレモンティーが出てくるようになっているようだった。
「未帆は何にする?」
彼はカウンターの隅にあった小さなメニューを私の前に出して、飲み物のページを開いてくれた。
見てみると、紅茶からココアまで、だいたい普通の喫茶店にあるものはそろっている。
「えっと、じゃあ...ホットチョコレート」
「了解」
言って、彼はコンロに火をつけて小さななべをその上においた。
男の人が料理している姿というのもあまり見かけないせいか、私はめずらしい感じがして、じっと彼の手つきを眺める。
「未帆ってさ、ひょっとして甘い物好き?」
隣の栞がレモンティーを置くと私に尋ねた。
「かなり。もう甘いものなら何でも」
「だと思った。そんな雰囲気だし。確か真一もそうよね?」
と、栞が声をかけると、敦司君は器用になべを揺らしながら軽くうなずいた。
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