「何を持っている?」

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20分ほどしてからだった。 店のドアが鈴の音と一緒に開いて、喫茶店に真一君が入ってきた。 制服の上から黒のコートを着ていて、鞄を手に提げていた。 「お待たせ。敦史、悪いけど暖かいの入れてくれる?手が冷たくって」 真一君は手袋のない手をこすりながら、カウンターの私の隣に座った。 彼はもうコートを着ていたけど、それを脱ぐと空いた席にかけて制服のネクタイを少し緩める。 「真一、お前もう英語のまとめやったか?」 敦史君がコーヒーを注ぎながら彼の方に目をやる。 栞は真一君のコップの隣に自分の空になったコップを並べた。 「敦司、面倒な事してるのね。まとめなんかしなくってもさ、あの授業だったら、教科書の下の例文を全部覚えてったら、80点は取れるわよ?」 「まじ? あのテストって全部例文からでてたのか?」 「テストってね。真面目に勉強する前に何が出るかの勘を磨く方が効率いいわよ?」
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