「何を持っている?」

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栞は敦史君の注いだコーヒーを勝手にとって自分の口に運んだ。 敦史君が「できたぞ」と言いながら、湯気の立ったホットチョコレートを小皿に乗せて差し出す。 会話を止めてしまったかもしれない。 でも本当に思いつかなかった。 自分が家に帰ってから何をしているのか、よく思い出してみるとあまり印象的なものはなかった。 帰って音楽を聴いて、本を読んで、学校の予習をして、ご飯を食べて、テレビを見て、また夕飯前と同じ様なことを繰り返しているような気がした。 ただ、何となく考えていると、栞は顔を前に出して、私をはさんで向こうにいる真一君に話しかけた。 「真一って確か音楽やってたよね?」 私が思いもしないその言葉に彼の方を見ると、真一君は照れくさそうに笑いながら、手をぱたぱたと振った。 「ギターとか…?」 私が聞くと、彼は急いで否定しながら 「ピアノしかできないって。ギターみたいな格好いいのは習ってないから」 と謙遜する。
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