3人が本棚に入れています
本棚に追加
栞は敦史君の注いだコーヒーを勝手にとって自分の口に運んだ。
敦史君が「できたぞ」と言いながら、湯気の立ったホットチョコレートを小皿に乗せて差し出す。
会話を止めてしまったかもしれない。
でも本当に思いつかなかった。
自分が家に帰ってから何をしているのか、よく思い出してみるとあまり印象的なものはなかった。
帰って音楽を聴いて、本を読んで、学校の予習をして、ご飯を食べて、テレビを見て、また夕飯前と同じ様なことを繰り返しているような気がした。
ただ、何となく考えていると、栞は顔を前に出して、私をはさんで向こうにいる真一君に話しかけた。
「真一って確か音楽やってたよね?」
私が思いもしないその言葉に彼の方を見ると、真一君は照れくさそうに笑いながら、手をぱたぱたと振った。
「ギターとか…?」
私が聞くと、彼は急いで否定しながら
「ピアノしかできないって。ギターみたいな格好いいのは習ってないから」
と謙遜する。
最初のコメントを投稿しよう!