「何を持っている?」

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私からしてみると何か楽器が一つできるだけで十分格好いいと思うのだが。 確か私は小学生の頃は、木琴が叩けたはずだけど、今はもちろんできるわけもなく…。 結局何もできずじまいになっていた。 「私もちゃんとピアノやっとけば良かったな。小学校卒業の時にさ、中学は受験で忙しいから、って言い訳して無理矢理やめちゃったのよ。先生が大嫌いだったから。おかげで今はもう全然。エリーゼくらいしか弾けなくなってるんだろな」 と両肘を突いて、顎を手にのせながらそんな事をつぶやいた。 何だか、よく似た経験を持ってるだけに、栞の仕草に変に共感してしまう。 「でも受験あるのに大丈夫?」 私が真一君に尋ねると、彼は両手でコップをはさんで持って、冷たい手を温めてる。 「別に音大に行くわけじゃないし。暇な時に練習するだけだから。未帆も何かやってみたら? それこそ、ギターとか」 「うん、考えてみる…」 言って私はまた自分のコップの揺れる面を眺める。中に映る私の顔はひどく惨めなものにも見えた。
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