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「未帆?」
栞の声に、私は我に帰ったように彼女の方に振り向いた。
私の勢いがすごかったせいか、彼女は驚いた表情で私を見ていた。
「どうか、した...? なんか雰囲気ヘンだけど」
「ごめん、別になんでも」
早く打つ自分の鼓動が手を当てなくても感じられる。
手の中のカップに残った分をそのまま飲んで、空にすると私は自分の鞄を持って、椅子を立ち上がっていた。
「ごめん、今日ちょっと用事あるから、先帰るね。ほんと、ごめんね」
と言って、みんなが止める前に鈴の音のなるドアを開いていた。
後ろ手にドアを離すと、そのまま振り返らずに雪の積もった歩道を走っていく。
鈴の音だけがいつまでも耳に名残惜しむように残っていた。
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