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いつものようにCDをかけようとも、本棚の雑誌を読もうとも思えなかった。
キャスターの椅子が私の動きに合わせてゆっくりと回る。
勉強も、ピアノも、料理も。
私の部屋に私だけのものがあるのだろうか。
ただ、時計の音だけが静かに響く。
東京ではいつでも前の道を車が深夜まで走っていたから、静かな瞬間なんてなかった。
けれどここは...静かすぎる。
静かすぎてこわい。
秒針の音が聞こえるなんて。
私が上着を脱ぐと布のこすれる音がして、それをベッドの上の鞄に重ねて置くと、ふとそのそばに落ちたクロスペンダントが目に入る。
真一君にもらったその銀の十字架は外からの光を返し綺麗な色を見せてくれる。
私の心とは関係なく。
私は座ったまま、いつになく時間も忘れてそのきらめきに魅入っていた。
まるで何かを忘れたいかのように。
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