「私たちにとっての『時間』」

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雪が降り始めた。 街灯の周りにはオレンジ色の雪が舞い、私の部屋の窓にも白い点が付いては溶けて消えていく。 部屋の暖房を消して、光も消したら、この窓にも雪のカーテンができるだろうか...。 いつまでも、こうして自分の部屋の窓から夜の雪を眺めていたかった。 自分は何なんだろう。 どうしてこんな風になったんだろう。 そんな事を考えると、ひどく疲れて気分が悪い。 胸の奥、心臓の隣のあたりに、何か重たいものを詰め込まれたような気分になる。 今日の出来事。みんなの好きなもの、そんな当たり前のものが自分にはない事に気付いて、一人居場所がないような気がして逃げるように帰ってきた。 ...本当に逃げたといった方がいいかも知れない。自分でもそう思う。 私は冷たい窓に額を当てて目を閉じる。 ひんやりとした感覚が心地よい。 ゆっくりと息を吐くと、窓が少し曇る。 冷たさに全て消してもらえるような気がする。 このまま私を凍らせて、そのまま放っておいてほしいかった。 そんな事を考えていると時間は勝手にすぎていく。
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