失われた記憶

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俺が声を出す前に男が喋った。 「あれ!君・・・さっきの!」 そして、返事をする前に、握手を求めてきた。 「俺は安藤。よろしく!さっきは大変だったねぇ・・・ でも最初だったんでしょ?仕方ないよ。 あ、君はなんて名前なの? とりあえず、歩きながら話そうか?」 そう言うと、俺の肩に手をかけて歩き始めた。 なにやらとてつもなく「速」そうな人だ・・・ 「いやぁ、まいっちゃっよぉ。さっきは君のせいで死に掛けたからねぇ・・・ でもあれは仕方ないか、敵が爆発する時間を計算して投げてるから。 君も慣れればそういう事出来るようになるさ。俺も最初はすぐ死んじゃったし。 あ、それよりも名前教えてよ!」 俺は混乱していた。 (慣れれば?) (そういう事って何?) (最初は死んだ???) 「あ、あの・・・・」 俺は声が詰まって何を話せば良いのか分からなくなった。 安藤はそれに感付いたのか、 「あ、ごめん。まだ説明受けてないんだっけ?」 と、申し訳なさそうに謝ってきた。 俺も何が何だか分からないので、 とりあえず頷(ウナヅ)いておいた。 「あの・・・説明って、何のですか?」 安藤はニヤッと笑うと、 「聞いてからのお楽しみ」 とだけ言った。 再び歩き始めようとした時、 安藤が何かを思い出したようにポケットを叩き。 「やべっ、煙草忘れたから一回戻るわ!すまん。 あ、西7番なら階段上がったら見えるはずだから」 そう言うと、走り去ってしまった。 「・・・じゃあ先行ってますね」 その声が聞こえたかは分からない。 色んな意味で安藤は速かった・・・・・
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