失われた記憶

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「今から係りの者が来ますので・・・」 それだけ言うと、女はどこかへ行ってしまった。 暫く、腕を組んで色んな事を考えてみたけど、 さっぱり思い出せない。 ネームプレートに、 『被験者  893番 』 とだけ書いている。 (・・・俺の番号か?) 隣は白いカーテンで遮られてるけど、 さっきから物音がする。 誰か居るんだと思う。 話しかけてみたけど、 返事は無かった。 暫く静寂に包まれた・・・ その静寂が心地良い・・・ 「ガチャッ・・」 突然、扉の開く音がした。 誰か近寄ってくる・・・ 足音で分かる。 (一人じゃない・・・) サーっとカーテンが開くと、 白衣を着た細身の男が数人と、 小柄な女性が一人立っていた。
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