失われた記憶

5/10
前へ
/52ページ
次へ
(俺には・・・ 自分が誰なのかを思い出すことも出来ない) (日本語・・・だよな・・・ 日本人なのは確かか・・・ しかし一体ここは・・・?) そんな悩みを他所に渡辺はさっさと仕事を終えたい口調で、 「じゃっ、着替えが終わりましたら本施設一階、 西側の7番受付窓口まで来てくださいね」 と、 目の笑っていない笑顔で言うとそのまま出て行ってしまった・・・ 俺は一呼吸すると、ふとんから抜け出し、 少しよろめきながらロッカーの扉に手をかけた。 予想はしてなかったが、 ロッカーの中に身に覚えのあるものを目にした。 (軍服・・・・・夢の中と同じもの・・・だよな・・・・・) そこには綺麗な状態の軍服と、 小さく893番と書かれたなシャツ、 そして黒い煙草の箱の様なものが置いてあった・・・ 他に着るものも無く、 仕方なく軍服に着替え、 煙草の箱らしきものを手に取った瞬間、 突然、箱が光りだした。 「うぉっっ!!」 大声が出る程驚いたが、 周りには気付く者も居ない・・・ よく見ると、矢印で何処かを指している。 どうやらGPS機能がついているらしい。 俺はそのGPSらしきものを握り締め、 矢印の方向へと向かった。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加