一章

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明神 小夜里(みょうじん さよ)は、大きなベットに身を横たえていた。 陶器のように白い肌。その身に包むのは黒いゴスロリ風のチャイナドレスである。膝までしかないチャイナドレスの先はなにも身につけていない素足である。 黒のシーツが、彼女の肌の白さをあらわにしているようだ。 ノック音が、数回した後こちらの返事も待たずに扉が開いた。 「小夜、支度はできたのか?」 黄色い皇帝が着るような中華服を身に包んだ少年が眉を潜めた。 小夜は右足をあげた。 「ブーツはかせて。」 少年、明神 剛(みょうじん つよし)は、ため息をついて鏡台脇に投げだされた漆黒のブーツを掴んだ。 ベットに近寄ってさらに眉を潜めた。 小夜のまわりには、タロットカードがばらまかれたように彼女のまわりにある。 絵柄が見えるのは数枚。 後は裏返しになっている。 皇帝。審判。運命。魔術師。死神。塔。 ギシッ。 剛が、小夜の上に覆いかぶさるようにして妹を睨んだ。 「…何を視た?」 剛の指が、小夜の左目にあてがわれた黒い眼帯をなぞった。 猫のような大きな瞳が、剛を見た。 桜色の唇が笑みの形に開いた。image=357346932.jpg
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