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山上 美里(やまがみ みさと)は、等身大の鏡の前で、大仰なため息を一つ吐いた。
女性にしては、長身でスレンダーな体型。
顔は中性的に整っている。
「はぁ。」
もう一度、ため息を吐き、鏡の中の自分を見た。
白いシャツに、黒いベストに黒の燕尾服、ついでに黒のネクタイ。アンティークの懐中時計。
肩までかかる髪は、後ろで束ね青黒い細身のリボンでとめてある。
「…どこから見ても男。しかも…執事?」
山海桜は、仮装パーティーである。
美里は、桜海(おうみ)高校なので洋装である。
衣装は、各学校から出ているのだが…この衣装を選んだ先輩は嬉々としていたので故意だろう。
まぁ、ヒラヒラのドレスが着たいわけでもないし。
部屋の扉が切羽詰まったように、ノックされる。
「はい。」
美里が、扉を開けるとそこには正真正銘の美少年がいた。
紀本 英樹(きもと ひでき)は、美里よりもわずかに背は低く、美しく可愛らしい美貌の持ち主である。
しかし、彼はまだ桜海の制服のままである。
両手に抱えているのは、レディが着るようなヒラヒラフリルの乙女心満載のドレスだ。
「これ、お前のだろ!さっき、先輩がお前のと間違えて渡したんだ!」
「…いいえ?そのドレスは英ちゃんがとっても似合うと思う。」
「俺が、似合うわけないだろう!」
(いいえ、凄く似合うと思うよ。)
「早く、脱いで俺によこしやがれ!」
英樹は実力公使に出、美里の燕尾服に手をかけた。
「あら。」
「まぁ、お邪魔したかしら」
二人の女性が、扉の前に立っている。
「あっ、ちょうどよかった先輩!この服渡し間違えてますよ!」
英樹が、先輩にヒラヒラドレスをつきつけた。
「あぁ、もっと二人のツーショットが見たかったのにぃ。」
「着てくれた方が面白かったのに。まぁ、いいやはい男もの」
そう言って一式の衣装を英樹に渡し、ドレスを回収した。
美里は、英樹の衣装を見て、げんなりとした顔で
「…先輩?アニメの影響かなにかですか」
英樹の衣装は、英国紳士的な貴族の坊ちゃんが着るようなものである。
「だって、みんなのリクエストが多かったのが、執事と坊ちゃんなんだもん」
「…さいですか。」
二人の疲れた声が漏れた。
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