暗部(ダークサイド)

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銀行強盗を片付けて寮に帰って来た俺は慢心相違な状態だった。   警備員(アンチスキル)も居るから楽勝だぜ、とか思っていたのだが警備員(アンチスキル)の到着が遅れたので単身で乗り込むことになった。   決して俺が望んだ結果じゃない。警備員がもうすでに解決したという女帝さまの口車に乗せられて、正面から堂々と乗り込んだの運のつき。   気付けば俺は銃で武装した銀行強盗達に真正面から立ち向かうことになった。   極限状態でサバン・シンドロームで発症したから、どうにか片付けることが出来たものの普通のレベル3に突入させる場面じゃなかった。   ともかく、ひったくり犯相手の追走劇や銀行強盗を相手取った戦闘のおかげで休日だというのに平日よりも疲れてしまった。   そんな疲れも部屋に帰って来て…… 《お帰りなさい》   と書かれたスケッチブックを持って微笑む刹花の姿を見れば吹っ飛ぶというものだ。   高2だというのに娘を持った父親のような心情だ。これも老けている言えるのだろうか?   そんな疑問でさえ奥から漂ってくる食欲を暴走させる香りの前に消え去る。   今まで気付かなかったがどうも俺は単純らしいな。少女の笑みと作る食事があればどんな困難も乗り越えてしまいそうだ。   ある種、漫画の主人公のようだな。 「ただいま、今日の夕飯は何だ?」 《オムライスです。ただ、玉子焼きを少し失敗してしまって……》   とたんにシュンとした表情に変わる。まったく、可愛いな!   こんな実情を甲拍あたりに知られればロリコンなどと罵られそうなものだが、それが気にならないほどに愛おしい。   刹那に脱いだ上着を預けてリビングに入ると食卓にオムライスの乗った皿が二枚。   確かに多少は玉子焼きが崩れてしまっているようであるが、その上にケチャップで描かれた可愛らしい猫が補って余りある仕事をしている。 食べるのがもったいないので携帯で写真を撮っておくことにしよう。   待ち受けまではいかなくとも、アラームが鳴るときに映る画像にしておけば目覚めがよくなるかもしれない。
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