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さすが国会議員の新年会だわ。先生の喜寿のお祝いに開ける幻のお酒とは、とても価値がある物だろう。
先生は一口でシェリーグラスの中のお酒を飲み干した。
「先生お顔が赤いですが、お水をお持ちいたしましょうか?」「いや構わんよ。それより一杯どうだね?」
「そのような貴重なお酒、私などが一杯戴いてもよろしいのでしょうか?」「私は明羅さんに呑んで欲しいのだ。」
先生は手を握りながら耳元で囁いた。
「多分、明羅さんは処女であろう?」
私は驚きのあまり、耳元まで真っ赤になった。「先生!どうしてお分かりになられたのですか?」
先生は屈託なく笑い、私のうなじを触った。私は思わず大きな声をあげた。
「可笑しいのう!明羅さんは美しいから誤解されるだろう。しかし、私みたいな玄人は分かるのだ。ほら、照れてうなじまで赤くなっておる。」
「先生ったら。」
「明羅さんをからかうのはこれくらいにして、ここからが本題じゃ。明羅さん、君がこの珍酒の伝説を確かめては如何かな?」
「このお酒にどんな伝説があるのですか?」
「知りたいか?ならば、一口呑んだら分かるのだ。」
「でも私は仕事中ですし・・・。」
「安心しなさい。この会館の支配人には伝えてある。さあ!珍酒の伝説を確かめてきなさい。」
先生はシェリーグラスにお酒を注ぎ、私に手渡した。琥珀色の透き通ったお酒。ほのかにじゃこうの香りのするお酒を私は一口で飲み干した。
薄れて行く意識の中で、先生の声が聞こえた。「明羅さんなら、あの方の正室になれるだろう。明羅さんが相手とは、あの方が大変うらやましいのう。明羅さん、この珍酒の伝説を確かめ、あの方の願いを叶えて、戻ってきてくだされ。」
私はじゃこうの香りに包まれて、眠りについた。
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