序章~零鬼~

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――忍者の里、井河。 金色の髪、右目を封じ、右腕の無い侍が武士の軍勢を率いて井河の里を襲ったのは、まだ最近の事の様に語られている。里を襲った武士・榊家は、用心棒や戦の依頼を主に活動する武家だった。幼きながらも今回の井河の里奇襲依頼の筆頭に任された君も例外ではなく、更に榊家の次期当主だ。里は炎に包まれ、血に染まり、井河の忍達の墓場となった。しかし、一人だけ生き残った者がいる。君の目の前には、井河の幼きくノ一が涙を流して君を鋭く睨みつけていたんだ。君は血の滴る刀身を鞘に納めた。 「俺が憎いか」 幼きくノ一は、返事の代わりに武器を構えた。 「自分の家族や仲間を、容赦なく殺した俺を殺したい…そんな復讐に満ちた眼をしているな。」 すると君は、幼きくノ一の頭を優しく撫でた。 「なら殺せ、俺について来い。常に俺の傍らで復讐の機を狙っているといい。」 君は幼きくノ一に目線を合わせ、武器を奪い取った。 「俺の死の権利を、お前にくれてやろう。」 その後、幼きくノ一・井河 聖(イカワ ヒジリ)は榊家に仕えた。
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