一章

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 弐鬼 「美濃」 金色の髪に右目を眼帯で封じ右腕が無い侍と、長い漆黒の髪を後ろで一つに纏め、肩口から袖を切り落とした白い忍装束を身に纏ったくノ一という、異様な二人組。依頼を受けて屋敷を発ち、君は馬に乗り聖はそれを忍者の走法で追いかける。既に出発してから数日が経ち、そろそろ美濃に着く頃だった。それなりに広さはある為ここからは人から人へ辿り、刀鍛冶の所へ向かわなくてはならない。 「かの有名な刀鍛冶・志崎鉄丸の住まいが近くにあると聞いた。何処かご存知か?」 人とすれ違うたび、人は君の事を軽蔑の目で見た。近付くにつれ、鉄を何度も激しく打つ音が大きくなる。 「榊の者だ、依頼を伺いに参った。話を聞かせて欲しい。」 だが、打つ音が大き過ぎて声が届いていないのか、一向に人が出てくる気配は無い。仕方が無いので、君は勝手に中を覗き声を張り上げた。 「あのォ!榊の者ですけどォ!依頼を伺いに来ましたァ!ちょっと手ェ止めて欲しいんだけどォ?!」 「あぁ?!何か言うたか雲雀ィ?!」 「……。」 「何や気のせいかァ!」 「客やアホ、手ェ止めんかい。」 奥の一人が打っていた二人をど突くと、音が止んだ。刀鍛冶ってみんなこうなのか…?と、圧倒される君に奥の一人が声をかけた。 「すんまへんなァ、どーぞ入りんさい。」 広い土手には数々の道具が置かれ、その奥に狭い囲炉裏の間があった。その囲炉裏を囲むように、四人は座った。 「ワシはコイツらの幼馴染で世話役の、塚本 鴇(ツカモト トキ)っちゅーモンや。」 「ワイは刀鍛冶の、志崎 飛鳥(シザキ アスカ)や。」 「…志崎、雲雀(シザキ ヒバリ)…」 「コイツら双子ですわ、あと依頼人。」 丁寧に自己紹介をする依頼人お三方、空気的に君も自己紹介をする。 「榊 繋(サカキ ツナギ)だ、依頼の話を伺いに参った。」 「判っとる、さっき言うてはったし!」 とは飛鳥の弁、聞こえてたのかよ!と君は少し苛立つ。 「それで、依頼内容は?」 「…簡単に言えば、刀集めやな。」 「ワイら双子のオトン・志崎 鉄丸が打った、生涯最後の最高傑作…全五本を回収してきて欲しいんや!」
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