一章

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 参鬼 「死の権利」 『依頼を受け持った者は何か特別な理由が無い限り、依頼を拒否することを禁ずる。』 その榊家で定められた戎を思い出し、思わず即答で「断る」と言いかけた君は咄嗟に口を押さえた。しかし、ただの刀を五本集める程度の依頼なら誰でもできる。出発前の当主の言葉も、依頼人が君を担当者に選んだ理由も何の意味も成さなくなってしまう。基本、君が担当している依頼は相当身分の高い者の用心棒だとか、戦など簡単に成し遂げる事ができない依頼ばかりだ。 「…ただ…」 言い難そうに雲雀が口を開いた。 「…ただ、父が打ったその五本の刀は…普通の刀やない…」 「…伝説の妖刀、だと聞いている。」 「“完成式五神刀・鉄丸スペシャル”…その名の通り、“神が宿る五本の刀”。妖刀と言うより、神刀と言うたほうがしっくりくるかもしれへんな!」 少し外来語が入っていた為、聞き取りにくかった。 「飛鳥…“鉄丸スペシャル”なんて名前やっけ…?」 「おぅ!たった今ワイが命名したった!」 「するな!」 先程からの飛鳥の意図的な天然っぷりに、耐えられなくなった君は床を思い切り叩いた。 「そんな事はどうでもいい、つまり簡単に五本手に入れることは出来ないと言いたいんだな?」 「せや」 「ジブンの力を、ワシらは買ってんねんで。ガッカリさせんなや?」 三人の表情を見ている限り、依頼は簡単そうに見える。 「俺を誰だと思ってる?榊家時期当主・榊 繋だぞ?俺に、不可能なんて言葉は通じねぇ!」 そう、ただ面倒なだけだ。君はそう言い切ると、三人は半信半疑の苦笑いを浮かべた。 「長い旅路、疲れてはるやろ?もう日も暮れてきよったし、ここに泊まり!」 「泊まり!って、決定事項かよ!」 そうして君は、強制的に泊まる事になった。何だかんだ言って、ここ数日充分に食事も睡眠も摂れていなかったので、丁度良かった。そうと決まれば、鴇は直ぐに夕食の準備に執りかかった。飛鳥と雲雀は囲炉裏の前で、何やら楽し気に話している。君は外に出て、休む事無く周囲を見張り続けている聖の様子を見に行った。 「何も変化は無ぇか?」 「あったら知らせてます。」 相変わらず可愛気の無い女だな、と一瞬思った。君は「まぁ座れ」と、馬も足元に座るよう促した。そこは、君の隣でもあったので聖は一瞬躊躇したが地面に腰を下ろした。
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