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「し、失礼します」
聖は少し距離を置いて、君の隣に蹲る様な形で座った。
「聖、俺の事嫌いか?」
「…は?」
何を言い出すかと思えば…と、暫く開いた口が塞がらなかった聖。君の事を暫く軽蔑の目で見てみる。
「そんなの、嫌いに決まってるなじゃいですか。」
今も鮮明に憶えている、あの時の君の禍々しい姿を。里の者達を無造作に斬り殺された、悲しみを。仲間の仇を、好きになれと言われても、到底無理な話だ。
「最近思ったんだけどな、俺が死ねばお前が満足するなら…別にお前が俺を殺さなくてもお前は満足するんじゃねぇのか?」
聖の角度から君の顔は、眼帯で覆われていて見えない。君が聖にどんな表情で、どんな気持ちで訊いたのかもわからない。ただ聖は、もう軽蔑の目で君を見てはいなかった。
「あの時若は、私に“死の権利をくれてやる”と言いました。だから、若は私だけの手で殺します。いつ殺すかも、どうやって殺すかも、私が決める事です。誰にも死の権利は渡しません。私が若を殺すまで、私は若をお護りします。」
聖は君に、跪いた。君は差ほど驚いた様子も無く、聖の頭に手を置いた。
「変な事聞いて悪かったな、これからも宜しく頼む。」
「御意」
そう言って君は立ち上がると、再び三人の元へ戻っていった。聖は君の姿が見えなくなるまで、君の背中を見つめていた。名前も知らない、不思議な感情が生まれるのを感じた。
ただ、熱かった。
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