3章"再会"

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瑠衣は暗闇に紛れ走る…。 万が一を考え、力を使う転移も"神足"も使わない。 ただひたすら天王山に向かって走っている… 普通に走っても常人の二倍の速さは保っている。 朝までに天王山には確実に着く。 桂の伝言と新撰組を守る、それだけの為に…。 (しかし…伝言が馬鹿野郎か…小五郎らしいかな…) 桂と久坂は仲が良かった筈、だから聞いた、最後になるから…。 今日は頭巾を被っていない、いや…止めた…姿を見られても別に構わない、その為に天王山に行くのだから… 瑠衣はわき目も振らずただ天王山を目指した。 朝ー天王山 瑠衣は正面の階段では無く、反対斜面の獣道から山に登る。 山頂には建物が一つ、その外に陣を張っている。 瑠衣は久坂を探す…意外にも一人離れ大木を眺めている。 「…久坂玄瑞…だな…。」 大木の上に乗り、久坂に話掛ける。 「…誰だ?」 久坂は上を見上げると、少年とも青年ともつかない忍が一人大木の上に居る。 「誰でも無い…ただ小五郎からの伝言を伝えに来た…。」 「小五郎…桂か?」 「あぁ…。」 桂には悪い事をしたと思う、自分は過激派に抵抗出来なかった…それでこの始末だ…。 本当は桂ともう少し先が見たかった…もう全てが遅いが…。 「それで桂は何と?」 「…"馬鹿野郎"…と…。」 「馬鹿野郎か…ははは…彼奴らしい…お前は桂の忍か?」 「違う…偶々気が合っただけだ…お前らの見方でも無い…。」 「なら、どうして危険を冒して此処まで?」 「…世話になった恩返し…。」瑠衣はニヤリと笑って見せる。 「変な忍だな…。」 「人間様々だからな…久坂…小五郎に伝言あるか?」 その言葉に久坂は少し考える…そして… 「彼奴も一言だったんだ、俺も一言…"すまない"…と…。」 「・・・分かった、必ず伝える…。」 「…最後にお前に会えて良かったよ…此で後悔も一つ少なくなった…。」 「…そうか…ではな最後くらい後悔するなよ。」 久坂がもう一度上を見上げると、忍は既に姿を消していた。 「最後くらい…か…言ってくれる…。」 ふっと笑い、久坂は陣に戻って行った。 ・
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