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昼近く…近藤達は天王山の長い階段を登っていた。
「何処まで続くんだ…。」
この暑さに永遠と続く階段である、原田も暑さに引き気味。
「確かに…このままだと山頂に着く前に暑さで全滅しそうだ…。」
近藤も流石に一言漏らす。
「待てよ…皆止まれっ!!」
何かを思い付き、近藤は部隊の進行を止める。
「皆、着ている甲冑を脱ぐんだ!!」
近藤が自ら進んで甲冑を脱ぎ捨てる。
「このままでは山頂に着く前に我々の方が全滅するっ、身を軽くし、暑さを凌ぐ!!」
その言葉に隊士達も藩士達も甲冑を脱ぎ出す…。
『ガチャン‥ガチャン‥ガチャン‥』
物凄い数の甲冑が階段に転がる。
「はぁ~涼しくなりましたぁ~。」
「それに軽くなったしな。」
総司と永倉は軽く飛び跳ねて見る。
「おいおい…階段の上だぞい、落ちたらどうする…。」
軽くたしなめる井上、そういう自分も甲冑を脱いでかなり楽になった。
「皆脱いだか?行くぞっ!!」
近藤の言葉と共に進行が再開される。
その様子を木の上から見ている瑠衣、一応心配半分で山頂から少し下って来た。
(心配は無さそうだな…後は衝突する瞬間か…。)
木を伝い、また山を登る、山頂までまだ少しある、暑さで倒れるのは居ない様だが、この階段はきついだろう…。
総司も汗をかきかき登っている。
瑠衣は腰の脇差しにそっと触れる、元々総司の脇差し…ずっと一緒に時を歩んだ…。
(今はまだ…もう少し…)
心配していた封印も根付けと、連日の戦闘で気を張っているせいか安定している様だ。
山頂が近付いて来る、瑠衣は先に山頂の木の影に身を隠す。
この天王山で幕府方に死者は居ない、ただ数人怪我をするくらい…けど怪我をさせたくない、瑠衣は懐から結界符を取り出し、じっと時を待つ…。
近藤達が山頂近くで真木和泉と睨み合いを始めた。
(そろそろだな…。)
瑠衣も慎重に出る機会を窺う。
「我は真木和泉、この天王山に登る者は何者ぞ!!」
昔ながらの鎧甲冑に陣羽織り、少々時代錯誤な真木。
「私は近藤勇、会津藩預新撰組局長だ!!」
「ほぅ近藤とやら、この天王山に登るとは良い度胸をしていると見る。」
真木はニヤリと笑い近藤を見下す…。
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