3章"再会"

12/31

2977人が本棚に入れています
本棚に追加
/1184ページ
「・・・・・やはり行って見ましょうか…。」 屯所に帰って来た夕方、悶々と考えていた総司だったが、疑問に答えが欲しいと洞窟に行く事にした。 幸い明日は非番、土方に外出を話して屯所を出る。 あの場所に行くには街中を通らないとならない。 焼け野原となった京の一角を眺めながら、複雑な心境で歩く。 (沢山…無くなりましたね…建物も…人も…。) 何時も歩いていた巡察の道も、斬り合いした場所も真っ黒になり見る影が無い…。 (普通の人々を巻き込むなんて…他にやり方はあるでしょう…。) 総司は悲しい思いで街中を抜けた…。 久しぶり来る滝の洞窟、やはり此処は誰も足を踏み入れない…なのに何故知っている? 疑問が沸々とよぎる… 頭が痛い…また考え様とすると此だ…。 総司は滝の端から洞窟に入った。 洞窟内は人気が無い…本当に来るのか… そんな事を思いながら岩に座って空を眺める…時間はもう夜、星が輝いて洞窟内は薄青色にそまる。 「はぁ…」 "サク‥サク‥サク‥サク‥" 外の方から足音が聞こえる。 「やはり知っていたんですか…。」 足音の主は天王山の時とは違い着流し姿で脇差しを差している。 「…あなたは誰なんですか?」 その質問に切なそうな瞳で返って来る。 見た事があるその表情… 自分は確かに知っている… 『ズキンッ!!』 頭の痛みもそれにあわせて酷くなる…。 「私は…あなたを…知っている…そう思います…くっ…。」 頭を抑え、岩から滑り落ちる。 「思いだせ…そうで…出来ない…はぁ…はぁ…」 すると突然抱き締められた。 「…ごめん…なさい…こんな事になるなんて思わなかった…本当に…総司…ごめんなさい!!」 急に喋り出したその声に心の中の何かが外れる気がする… 頭の中に色々な記憶が戻って来る… 「恨まれても憎まれても良い!!自分は総司にそれだけの事をしたのだからっ!!」 涙を流し、叫ぶ瑠衣…総司が楽になるのなら自分はどうでも良い… 「瑠・・・衣・・??」 「そう…みんなの記憶を消したのは私…恨んでくれて構わない…。」 総司は瑠衣をきつく抱き締める… 「恨むなんて…出来る訳無いでしょう…私は…瑠衣!!」 懐かしいあの温もり…ほんのふた月経つか経たないかなのに…。 ・
/1184ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2977人が本棚に入れています
本棚に追加