4章"裏表"

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残暑厳しく八月ー 禁門の変騒動も一応は一段落し、街も復興に向けて動いている…。 新撰組も騒動の後は京にまだ潜んでいる長州人の捜索が主となり、とりあえず普通の日常が戻って来ている。 瑠衣が戻って丁度一週間… 瑠衣も一応隊務をこなしながら、リストの人間を探し始末してっている。 時には一~二日屯所に戻らない事もあるが、其処は土方が上手く誤魔化して何事も無く新撰組に居着いている(やはり道場の一件が隊士達には衝撃的だったらしい…)。 瑠衣がこんなに早く新撰組に戻ったのには少々理由がある。 この先封印した人達数人が江戸に下る、その中には近藤も含まれ、やはり居ないと都合が悪い…。 多分あの時期が全員を一ヶ所に集められる数少ない機会… 総司に負けたのもあるが、先を見通しての選択でもある…。 それに…あの男が新撰組に入隊する前に戻りたかったのもある、あの男が入ると話が面倒になる…そう瑠衣は踏んだ、色々…本当に色々考えて組に戻った。 「結局夜行動するのは前と変わらないし…はぁ…。」 懐かしの物見櫓の上で、街を見下ろす瑠衣。 今日は着流しに手甲…それに総司の菊一文字を腰に差している…。 とりあえず隊務に支障が無いよう、リストの人間探しは夜が主力、居場所と行動はある程度掴んでいる為、此方は余り苦労はしない。 今も時間待ち、もう少しで目標が夜の街を歩く、そこを狙うつもりで櫓で待機している。 「そういえば池田屋事件の後も此処に来たっけ…。」 あの時は事件が終わった安堵と、その後の自分の身の振り方で結構切羽詰まっていたっけ… 今考えると、かなり情け無い…あの時は本当に戻るつもりが無かったし、総司の事で思い詰めていた。 「馬鹿だなぁ~ 完全に新撰組には戻れないのに…また何時向こうに戻らないといけないか分からないし…戻っちゃって良かったのかな?」 遠くに巡察組が見える…今日は藤堂の隊だ…。 瑠衣は手甲に付いている時計を見る、この手甲意外と便利な機能がおまけで付いてたりする。 「十時半…そろそろかな?」 目標は祇園からの帰り道、瑠衣は祇園の方向を見て、櫓から一気に飛び降りた!! ・
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