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その女の子はジンと目が合うと恥ずかしいそうに目を逸らす。しかしジンはその女の子をどこかで見たような気がしてずっと見続けていた。
「……………ジィー」
「えっと…………あの…………」
「……………ジィー」
「あ、あの………………」
「………………ニコ」
「あう……………」
ジンはたまに笑ってみせると女の子は視線をさまよわしたり、もじもじしたりと忙しそうにしているので笑っていた。すると……
「はぁー、力になりたいと思うならそんなにもじもじしていてはダメでしょ?」
女の子の後ろから人生の後半を生きているような女性が微笑みながら近寄ってきた。
「お母さん………」
「相変わらずメリルは恥ずかしがり屋だね。若い旅人さん、地図を見ながら困った顔をしていたけど道に迷いましたか?」
前半は女の子―――メリルに頭を撫でながら、後半はジンに向かって言うメリルの母。
この2人はこの街の人だと判断したジンは地図より地元の人の方が確実だと思い、2人に西の入口まで道のりを聞いてみた。
「西口までの道のり?………もしかして今からこの街を出発するつもりかい?」
「うん。宿屋に泊まる為のお金がないし、十分楽しんだから」
ジンが自分の失敗に苦笑いしながら答えるとメリルの母は何やら困った表情になった。
「……出発するのだったらもう少し早くした方が良かったね。旅人さんはこの街が初めてでしょ?」
「う、うん。そうだけど………、何か不味いことでもあった?」
「んー、不味いことって言うより…………。まぁ、百聞は一見に如かず。あれを見てごらん」
メリルの母が指差す方向を見てみると、その先にこの街の入口の一つ―――魔法学園イリーガルへ向かう時に使う東口の巨大な門が見えた。
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