第5章 神、家族って………

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「そっか……。でも話してくれてありがとう。そんな辛い過去なのに」 「別にそんなに辛くないよ。僕に物心が付く前の事だから。それに近所の人達が優しくしてくれたし」 笑顔でジンが言うとメイシスも悲しそうな顔から笑顔になった。 しかし瞳が潤んでいたので無理に笑ったのだろう。 「でもジン君“も”辛い過去を持っているなんて…………やっぱり世界は残酷ね。まだ子供でも弱い者からいろんなモノを奪い、強い者ですらその力と同等の代償(不幸)を与えるなんて………」 (ジン君“も”?どういうことだろう……) メイシスの言葉に疑問を持ち、ジンは内心首を傾げる。 するとそれを察したらしく、メイシスが視線を手元のお茶に移して話し始めた。 「実は私、昔はギルドでクエストをこなして生計を立てていたの。その頃ね………ジン君よりまだ幼い男の子と知り合ったの。その男の子はその歳でもうSランクになっていたのだけれど…………ね?そのかわり家庭環境が複雑だったのよ」 何故か自嘲気味の雰囲気をかもし出すメイシス。もちろんジンには分かるはずがない。 「その男の子は今どうしてるの?」 「え?う、うん。今その子ね………………」 「?」 周りの空気を全く読むことが出来ないジンが普通に話を変えたのだが、さらに空気が重くなってしまった。どうやら地雷を踏んでしまったようだ。 「今は…………行方不明だそうよ。噂ではどこかで元気にしているらしいけど」 「へー、そうなんだ」 「ええ……」 「だったら大丈夫だよ!噂って流れるとき何かしら理由があるんだから、元気にしてるっていう噂が流れたなら誰かが元気にしてる姿を見たんだよ」 暗すぎる空気とは逆に明るい笑顔で言うジン。 何の根拠もないのだがここまで明るく言われると本当の事のように感じる。 .
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