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事実、先ほどまで暗かった空気がまるでジン色に染められたように明るくなっていた。
(可笑しいわね。私の方が何倍も生きているはずなのに、逆に安心させられるなんて……………これが過去を乗り越えた子の力なのかねぇ)
※いえいえ、神様の包容力です。
「そうね。うふふふっ」
「ん?どうかしたの?」
「いいえ、何でもないわ。それよりせっかく私の話をここまで聞いてくれたのだからちょっと相談にのってもらってもいいかい?」
「うん、いいよ!」
ジンの元気な返事を聞いて優しい笑顔を浮かべるメイシス。
その表情からはもう先ほどのような暗い影は見当たらない。
メイシスはテーブルの上に置いてあった急須を持つと、中のお茶を自分とジンのコップに注いだ。
ずっと話していたので喉が渇いていたらしく、一度お茶を口に含む。
「………ゴクン。私ね、その男の子から過去の話を聞いたとき『そうなんだ……』しか言えなかったの。力になろうとしたのに………逆に気を使わしちゃって、何もしてあげられないまま男の子と別れたの」
「うん」
「それからしばらく、その男の子の事が頭から離れなくなってね………。クエストでミスをするくらいダメダメだったの」
「うん……」
「そんなある日、見かねた私の親友がね……私に渇をいれたの。『そんなに悩むならどうして何もしなかったの!アナタに悩んでいる姿は似合わないわ!!』って言われちゃったわ」
「随分と元気な親友だね」
「ううん、本当はおとなしい子なのよ?ただ、余程私のダメダメな姿を見ているのが嫌だったみたい」
そう言って苦笑いをするメイシス。ジンはその人の事を詳しく聞こうとしたが、昔を懐かしむように話すメイシスを邪魔しては悪いと思い、口に出さなかった。
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