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松浦「さて…。雑談もこれまでにするとしよう」
そう言うとともに松浦の目つきが急に変わった。
それはこの15年間の間、プロという名の荒波を乗り越えてきた勝負師の目だった。
松浦「守……。いや、猪狩監督。今回のドラフトでの狙いはどの選手だい?」
猪狩守「……………。いくらあなたがかつてのチームメイト。そしてボクの先輩であっても今はバスターズの監督…。教える義理はありませんね」
松浦「……そうか」
そうして松浦はゆっくりを目を細めていく。
ただ、その表情は何かを確信した表情だった。
松浦「…ただな、これでも私はプロに入ってから15年間、ずっとカイザースの選手としてプレーしてきた。そして多少の内部事情については良くわかっているつもりだ。これが何を意味するかお前にはわかるな?」
猪狩守「………つまり、カイザースが今欲している選手はあなたには筒抜けだということですか…?」
松浦「そういうことだ。ただ、安心しろ。お前が選択する選手はうちでは取らないからな」
猪狩守「じゃあ、バスターズではどの選手を選択する予定なんですか?」
松浦「それは………」
猪狩守「それは…?」
松浦「秘密だ」
その答えに猪狩は思わず呆然としてしまった。
そんな予想Guyな回答が返ってくるとは思いもしなかったからだ。
猪狩守「松浦さん…こちらは答えたんですからそちらも答えるのが当たり前ですよ」
松浦「それはそうだな。だが、私は自分の考えから選択する選手を推測したまでで、お前の口からは聞いていない。つまり、絶対という確証は無いわけだ。だから、蓋を開けるまでは中身は秘密にさせてもらうよ」
猪狩守「……まったく…。汚い論法を使ってきますね」
松浦「これでも伊達に長く、人生やってきているわけだからな。それじゃあな、守」
松浦は踵を返し、自分の球団の席へと戻っていった。
それを見送る猪狩は人知れず、ため息をついたのだった。
そしていよいよ…ドラフト会議が始まろうとしていた……
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