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肩に乗せられたニコの頭が少し動いた。
――まさかいま考えている下心が伝わったのか?
と焦ったが、ただ身じろぎをしただけらしい。
ニコは、どう思っているんだろう。
男は勢いでどうにでもなるけど。
女の子は、つき合って一週間にしかならない男とデキるんだろうか。
キスさえしたことがないのに。
ナップサックに忍ばせたコンドームは、出番があるのやら、ないのやら。
彼女は人の気も知らないで、肩に頭をあずけたままだ。
まったく無邪気なもんだ。
『――まもなく、広島、広島。
お降りの方はお忘れ物のございませんように……』
「おい、ニコ。着くぞー」
彼女の頬をつねってみる。
ちょっとそのほっぺに触ってみたかっただけ、だったんだけど。
「痛っ。んもぅ、なにすんのよ!」
寝起きで機嫌の悪い彼女に、下から睨み上げられた挙句、俺はバチーンと手を叩かれた。
どう考えても3倍返しだ。
乗車口が開いたとたん、むっとするほどの熱気に包まれた俺たちは、真夏の広島へと降り立った。
――越智康太、16歳。
現在の心境は、期待と不安に胸いっぱい、ってところかな!
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