💠プロローグ

4/4
前へ
/30ページ
次へ
肩に乗せられたニコの頭が少し動いた。 ――まさかいま考えている下心が伝わったのか?   と焦ったが、ただ身じろぎをしただけらしい。 ニコは、どう思っているんだろう。 男は勢いでどうにでもなるけど。 女の子は、つき合って一週間にしかならない男とデキるんだろうか。 キスさえしたことがないのに。 ナップサックに忍ばせたコンドームは、出番があるのやら、ないのやら。 彼女は人の気も知らないで、肩に頭をあずけたままだ。 まったく無邪気なもんだ。 『――まもなく、広島、広島。 お降りの方はお忘れ物のございませんように……』 「おい、ニコ。着くぞー」 彼女の頬をつねってみる。 ちょっとそのほっぺに触ってみたかっただけ、だったんだけど。 「痛っ。んもぅ、なにすんのよ!」 寝起きで機嫌の悪い彼女に、下から睨み上げられた挙句、俺はバチーンと手を叩かれた。 どう考えても3倍返しだ。 乗車口が開いたとたん、むっとするほどの熱気に包まれた俺たちは、真夏の広島へと降り立った。 ――越智康太、16歳。 現在の心境は、期待と不安に胸いっぱい、ってところかな!
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

112人が本棚に入れています
本棚に追加