こんにちわお兄ちゃん

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秋音市には、有名な学校が各所に存在する。 進学校として有名な零峰学園、ごく普通の高校だが制服が可愛いと有名な雛川高等学校、そして…… 県内ナンバーワンと言われるまでの不良校、玄武高校である。 「おい、デーモンだ」 呟きが聞こえる。声を発した男の横を通り過ぎて行く男がいた。 長い髪をまとめて後ろで結って下ろした髪がさらさらとなびき、右目に付けた黒い眼帯が印象の青年だ。顔は女性なら惹かれる程に整っている。 彼は菊谷荘司。この玄武高校に通う一年だ。 教室のドアを開くと、頭髪にメッシュを加えて色を際立て、耳、口、まぶたにピアスを二個づつ付けた男が菊谷に寄って来る。 「おっす菊谷」 元気に笑った男は、飯高良昭。 この一年五組のクラスメートであり、菊谷の中学からの縁だ。 「おう」 今まで歪ませていた口を少し緩めて、周りを見渡す。このクラスに現在いるのは五人だ。入学当初は十五人だったのだが、十人はそれぞれの理由で辞めていった。 「お」 菊谷は机に寝そべる一人の男に近付いた。 このクラスの一人である、久野洋平だ。 茶色い髪にワックスを付けて跳ねさせた髪型、まだ幼さは残るが端麗な顔つきをした少年である。 「おはよう洋平」 声をかけると、洋平は顔を上げて微笑んだ。 「おはよう菊谷」 「どうしたんだ、元気が無いぞ」 声のトーンで判別した菊谷は、何気なくそう尋ねる。 「ん、いや……弁当、忘れてさ」 洋平の弁当と聞いて、菊谷は頷いた。前に一度食べさせて貰った時があるが、絶品を越えた味であり、しかも彩色も気持ち良く揃っている。 「残念だな」 「ん~、俺が作っただけなら良かったんだが、今日は弟が作ってくれたしなぁ……」 「え、ちょっと待て。あれ――前、お前に食わせて貰ったのは、お前の手作りなのか?」 菊谷の疑問に、洋平が頷いた。
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