7人が本棚に入れています
本棚に追加
「よう、新田!」
「終業式ぶりー」
二人の顔を見た瞬間思った。
これはマズイ!
そしてタイミングの悪いことに葛城がこちらに近づいてきた。
「あれ? その…」
園山と言おうとした葛城の口をすかさず手で塞ぐ。
「ひ、久しぶり、二人揃ってどうしたの?」
「いやー、ゲーセンで偶然高見さんに会って話してたらさ」
「弥恵がカッコイイお兄さんと一緒にいるの見つけたから声かけたんじゃない!」
好奇心からなのだろう、二人はあたしと一緒にいるのは誰なのか、というかどんな関係なのか知りたいらしい。
だが、この童顔でカッコイイ男が葛城だとバレるのは非常にマズイ。
かといって知り合いだと紹介したら、二人から話を聞いた女友達が恋敵となる危険性も増える。
こうなったら、言うしかない。
「こ、この人は……」
「「この人は?」」
園山と七菜子が声を揃えて、次の言葉を促す。
「春樹さんって言って、あたしの恋人!」
「ぉおっ!」
「キャー!」
「むぐぐ!?」
いまだ口を塞がれている葛城は、あたしの今の発言に驚いてくぐもった声を上げた。
「だからデートの邪魔しないで。行こう、春樹さん」
騒ぐ二人を置いて、あたしは葛城とCDショップを離れ、フロアの外れにある休憩所に移動した。
「新田さん、どうしてあんなこと言っちゃったの!?」
先程の驚きからか、葛城は慌てた様子であたしに詰め寄った。
「大丈夫、二人は葛城先生だって気づいてません」
「そうじゃなくて」
あたしは千夏さんの厚意や園山と七菜子の後押しによって生まれたこのチャンスを逃してはならないと思い、意を決した。
「それに……あたしは先生のことが好きですから」
「……え?」
突然の告白に、今度は唖然となる葛城。
「あたしは、葛城春樹さんを先生としてではなく、男の人として好きなんです」
冗談ではなく真剣なんだと伝えるように、まっすぐ葛城を見据える。
しかし、葛城は目を逸らして俯いてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!